材木腐朽菌と
  ラン栽培の戦い


 ランと人間の関わりは何時から始まったのだろうか。
 中国では孔子がCymbidiumの美を発見したから、孔子の時代まで遡る?
 ヨーロッパにもオーキドの語源になった蘭が自生しているから、
 若し、そのラン原種がローマで栽培されていたのか????

 現在の洋蘭の歴史は・・・原種発見の年を調べれば解かる。
 リンネの植物分類学は、その点について、リンネはまさに天才である。
 後世の科学の行く末を洞察していたのか。
 神の啓示によってリスト作成に着手したといわれるが、
 神も、リンネの天才能力と熱情を喝破していたことになる。

 そして、この自生地では新参者で負け組みの植物の花に、
 熱狂する人間のDNA。
 花は、所詮植物の生殖器である。
 花を愛さない、関わりを持たない人から見れば、
 たかが、植物の生殖器に熱狂する愛好家を理解できないに違いない。
 チューリップの狂乱は一国を破滅にまで追い遣る事態にまでなった。
 この狂気が、その後、人々を世界の秘境に向わせる。
 西欧の植物、ランのプラントハンターには、花への狂信的なDNAが宿っている。
 狩猟民族のDNAであろう。
 動物から植物に代わっただけなのではないか???

 ランの栽培。
 園芸の栽培では日本は西欧よりも進んでいた。
 明治にきた西欧人は、日本の園芸、盆栽を見て驚嘆したという。
 西欧でラン栽培が始まったのは、アジアから、中南米から・・・
 プラントハンターによって美しい花が咲く植物が持ち込まれたときから。
 英国は自生する植物は限られている。
 北緯45度の英国。
 約300種の植物しか自生しない国である。
 だからこそ、世界中から植物を集め栽培する情熱が出る。

 命がけで世界の秘境にプラント狩猟に出かける。

 栽培法を研究する。
 この段階で、ラン栽培用のコンポストは研究されたのは当然である。
 自生地を再現するのは当然であろう。
 このとき問題になったのは、コンポストの有機物を早く分解してしまう菌である。
 鉢栽培でのコンポストの劣化、目つまり、排水不良・・・多湿による根腐れ!
 ラン栽培において、 大金をつぎ込んで秘境にプラントハンターを送り込んで採取したおびただしい株が、
 簡単に根腐れて枯れてゆく問題は、切実な大問題だったに違いない。
 現在でも・・・だから!

 コンポストを劣変させる菌、材木腐朽菌はラン栽培の敵である!
 以後、今日まで、ラン栽培と材木腐朽菌の戦いは続いてきた。
 ラン栽培の歴史は、材木腐朽菌が生息、繁殖出来ないコンポストの探索の歴史でもあった!
 この探索で・・・
  水ゴケ、オスマンダ、ヘゴ・・・が見つかった。
 羊歯植物の根は、強靭なリグニンを具備し、材木腐朽菌を寄せ付けない進化をした植物。
 これに着目して、日本からゼンマイの根オスマンダを輸入する。
 木性羊歯のヘゴの根を中南栄、アジアの熱帯地方から輸入する。
 ラン栽培において、材木腐朽菌に冒されない素材は、世界中から探索されたのである。
 このことは現在まで綿々と続けられている。
 昭和30年代では、オーストラリアのラン栽培では(Cymbidium)日本からモミガラを輸入したのである。
 現在の日本は、ニュージランドからバーク、水ゴケ、中国、ペルーから水ゴケ。
 極北の国々からピートモス、熱帯の国々からヤシ繊維。
 これらは、全て材木腐朽菌との戦いの結果、耐久性が認められたものである。

 1852年、英国のドミニー博士が、ランの発芽には材木腐朽菌の一種であるラン菌が関与している
 ことを突き止め、ラン菌による発芽に成功した。
 しかし、このラン菌の発見はランの実生、交配に限定され、
 この菌を添加したコンポストは開発されることはなかった。
 そして現在になった。
 ラン菌は材木腐朽菌の一種だから、水ゴケを早く劣化させ、根腐れを誘発するからである。
 こういうことで、ラン栽培には水ゴケにオスマンダをミックスした。


 昭和40年代になって、材木腐朽菌に冒されないコンポストがアメリカで開発された。
 カリフォルニアに自生するセコイヤ科の巨木である。
 山火事に耐えるために樹皮が30cmにもなるヨロイをまとった木。
 この樹皮なら材木腐朽菌を寄せ付けない。
 これをラン栽培に利用することが考えられた。
 化粧用バーク。

 現在のニュージランドバーク、杉皮、ヤシ繊維・・・はこの発想の延長線上にあるもの。
 材木腐朽菌に冒されないものに、岩石素材がある。
 多孔質を持つ岩石。
 軽石、鹿沼、パーミキュライト、パーライト、セラミック・・。
 岩石だから材木腐朽菌は生息繁殖出来ない。

 以上のように、ランはラン菌と共生する菌根植物ということはラン科植物の常識であるが、
 材木腐朽菌という菌は、枯れ葉、植物死骸を分解してランの養分を供給という能力は、
 他方において水ゴケなどの有機物コンポストを早く劣化させ、それが根腐れを引き起こすという、
 両刃の刃の特性をもつ。
 ラン栽培において、根腐れの問題は深刻で最も重大なものであるから、
 材木腐朽菌は削除されたのである。
 これは高山植物栽培でも同じ。
 腐葉土を用土にミックスすると、平地では温度が高いために、
 腐葉土の分解が急激に進む。
 腐葉土には窒素が含んでいるから・・・アンモニアガスが発生するだけでなく、
 腐葉土は微塵になり、排水不良、多湿などを誘発する。
 そういうことで、平地、暖地での栽培では、有機物をミックスしないで、
 岩石系の用土のみで植え込む。
 そういうことで・・・・
 ラン菌削除条件で化学肥料で栽培する栽培法が構築され現在にいたった。
 しかし、菌根植物であるランの栽培において、ラン菌削除は養分吸収において、
 決定的な欠陥を持つ。
 ランは自生地において、枯れ葉、植物死骸を材木腐朽菌であるラン菌が分解する
 炭素循環システムの中で進化し、生存してきたものだからである。
 この炭素循環という自然の法則を無視した栽培法というのは、
 必ず破綻する場面が出て来る。
 これが、現在大問題になっている
  株分け時の株の衰弱。
  ナンプ病の多発。
  山堀り株の3年目の危機。
  貴重種の絶種。
 以上ことを現在のラン栽培では解決克服できない。

 このことが、ランの普及に大きな障害になっている。
 ランは難しい!!

 これは材木腐朽菌が生きていないコンポストに原因がある。
 しかし材木腐朽菌が生きていれば、コンポストが劣化し、根が腐る。
 このジレンマの中に、前記の材木腐朽菌が生息できないコンポストが用いられてきた。
 この栽培法が続く限り、30年後、50年後、100年後も、
 ラン栽培は同じである。
 ほとんど進歩のない業界になる。
 イノベーションがない業界は衰微する。

 
 
 SUGOI-ne。
 材木腐朽菌を味方にする栽培法である。
 宇井清太が新発見したラン菌、材木腐朽菌は好気性菌。
 前記したように水ゴケを劣化させる。有機物素材のコンポストを劣化させる。
 3年、少なくとも3年劣化させない方法はないか????
 SUGOI-ne開発は材木腐朽菌を見方に利用しながら、劣化を抑制するという、
 最も困難なことを解決したものである。
 ペレットストーブで使うペレット。
 10tの高圧で樹皮を圧縮。
 この圧縮で広葉樹、針葉樹の樹皮が、ラン菌によって急速に分解劣化しないようにした。
 異業種の暖房機のペレット。
 このペレット製造機を利用した。
 こういう異端の発想が、ラン菌である材木腐朽菌を味方にすることが出来たのである。
 SUGOI-neは、
  1 宇井清太によるラン菌新発見
  2 高圧で生樹皮の圧縮
  3 ラン菌の勝ち組みになる潅水法 
 という三つの要件が具備され開発に成功した。
 この中の一つでも欠けると炭素循環栽培法は完成しない。

 昨日の敵は今日の友。
 ランとラン菌の共生関係も、この関係である。
 ラン自生地を鉢内に、地面に再現できた世界初のコンポストであり、栽培法である。
 恐らく、今後、このラン菌による炭素循環栽培法を超えるものは開発されることはない。


 宇井清太の逆転の発想。
 新たな時代を切り拓くのは「逆転の発想」の中から生まれる。

 

  

 
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kouza 1aa